大人の方の治療は、あごの成長が終わっているため、歯の移動だけで歯並びを整える必要があります。しかし、歯を大きく移動させると、歯ぐきに大きな負担がかかります。
歯を移動させると、元々歯があったスペースが空いてしまいます。その空いたスペースを埋めるため、新しい歯ぐきが作られます。しかし、年をとるにしたがって、歯ぐきの再生能力は衰えます。一般的には、20~25歳頃がピークと言われています。
そのため、25歳以降の患者さんの場合、いかに歯の移動を少なくするか、ということを考えながら治療をしなければいけません。
治療の流れ
こちらでは、いくつかの症例を紹介いたしますが、患者さんの状態によって治療方法や治療期間は大きく異なります。あくまでも、こういう事例があるという参考としてご覧ください。
治療例①
初診時
初診時25歳の女性です。前歯のガタガタと、口を閉じても前歯が閉じないオープンバイト(開咬)を治したい、を主訴として来院された患者さんです。
ガタガタを改善し、前歯を内側に入れるためには、小臼歯4本の抜歯が必要でした。さらに、上あごの歯列が狭いので、歯列を拡大する必要もありました。
上あご歯列の拡大
まずは、上あごの歯列を横に広げました。改善されるに従って、装置の種類を変えていきました。
ワイヤー治療を開始
小臼歯を抜歯して、ブラケットを取り付け、ワイヤー治療を開始しました。
特殊なワイヤー
途中から、特殊なワイヤーも使用しました。このワイヤーは、マルチループ・エッジワイズ・アーチ・ワイヤーと言い、通常のワイヤーよりも歯を動かしやすくなります。1本1本の歯の間でワイヤーがループしており、すべての歯を同時に動かすことが可能になります。
分かりやすく例えると、列に並んでいる人が1人ずつ前に動くのと、「せーの」で全員いっぺんに前に動くのとの違いです。
治療終了
治療開始から3年後、無事治療が終了しました。
治療終了から3年後
歯並びは安定しています。
院長からのコメント
上あごを拡大しさらに歯を抜かなければならない、なおかつ3年の治療期間を要するという大変な治療でしたが、患者さんの努力により、良い治療結果が得られました。良好な歯並びは、現在も安定しています。
※治療中に歯磨きの不協力や体質により以下の自体が発生することがありますが、本症例では認められませんでした。(歯痛、むし歯、歯肉炎、口内炎、歯根吸収、顎関節の異常、治療期間の延長など)
治療費用:約100万円
治療例②
初診時
初診時27歳の女性です。前歯の隙間を治したい、を主訴として来院された患者さんです。
歯が足りないところに、人工的な歯を1本作るという予定で治療を開始しました。
治療開始
左上奥歯の延伸移動のために、部分的にブラケット装置を着け、次に前歯にブラケットを付けて整えました。
治療終了
矯正治療が終了しました。当初の予定通り、歯が欠如していた左上には1本分の隙間ができています。右の矮小歯も、正常な大きさの歯を入れるために、両隣に若干の隙間を空けてあります。
修復処置
右の矮小歯にはラミネートベニアを、左の先天欠如の箇所にはブリッジを入れて整えてもらいました。
※ラミネートベニア・ブリッジは、患者さんのかかりつけ医にて入れてもらっています。
院長からのコメント
前歯を治したい、ということでお見えになりましたが、ご説明の上、奥歯のかみ合わせの改善から始め、総合的な治療を行いました。前歯の先天的欠如している歯は、かかりつけ医の協力によるラミネートベニア法により補い、美しい歯並びとなりました。
※治療中に歯磨きの不協力や体質により以下の自体が発生することがありますが、本症例では認められませんでした。(歯痛、むし歯、歯肉炎、口内炎、歯根吸収、顎関節の異常、治療期間の延長など)
治療費用:約70万円(ラミネートベニア・ブリッジ費用別)